日本語教室に通う学習者から、組織運営に携わる支援者へ。善意のバトンをつなぐパクさんのお話(横浜市で暮らす外国人トークリレー/第5回)
外国につながる皆さんに、生活の中での日本語との関わりについて話していただくコーナーです。
朴 美眞(パク・ミジン) さん
韓国出身/日本に住んで13年
NPO法人国際交流ハーティ港南台(以下、ハーティ港南台*)で、理事兼副会長として活動しているパクミジンさん。ボランティア活動をしながら、外国籍人材に特化した人材紹介会社で、外国人の継続雇用をサポートする仕事をしています。
*NPO法人国際交流ハーティ港南台:国際協力、国際相互理解を図ることを目的とし、約30年前に設立。交流活動、日本語クラスの開催のほか、生活情報や医療情報の提供を行っている。キッズケア(子どもの保育)を行っているのも特長。
日本に来た理由を教えてください
13年前、主人の仕事で日本に来ました。平仮名をしっかり勉強して来日したので、「日本語はもう大丈夫!」だと思っていましたが…街にあふれていた情報は、漢字やカタカナばかり。駅名もローマ字だけでは読めないものも。これは大変だと思い、急いで日本語の勉強を始めました。
どのように日本語を勉強してきましたか?
同じ団地内に住んでいる韓国人に、「日本語が勉強できる教室があるよ」と誘われ行ったところが、ハーティ港南台でした。日本語教室と聞き堅苦しいイメージがあったのですが、実際はすごくアットホームで、日本語の勉強方法も希望に合わせた形で対応してくれました。また、外国人と日本人が対等に交流できるような雰囲気があり、イベントの企画などについても意見を聞いてくれ、とても嬉しかったです。
3年ほど通い日本語も上達したころ、今度はハーティ港南台や学習者の力になりたいと思うようになり、スタッフの一員として活動をするようになりました。
ハーティ港南台では、どのような活動をしていますか?
はじめは交流スタッフとして活動していましたが、数年前からは組織運営に携わる立場となりました。学習者への支援だけでなく、学習者を支援者側に誘う活動も積極的に行っています。しかし無償で行うボランティアは、自発的な意思がないと継続していくことは難しいものです。また、日本語力に自信がないからと諦めてしまう人もたくさんいます。
私自身も、仕事とボランティアの両立は大変だと感じるときもありますが、どこかで自分の背中を見て「やってみよう!」と思う人がいるかもしれない、という気持ちで活動しています。運営側に立って7年目。その間に、3人の外国人が理事に就任しました。日本人スタッフとともに、より良い支援の形を模索し日々奮闘中です。
日本語学習における、より良い支援の形とは?
学習者側の要望をしっかりと吸い上げ、その人が求める形できっちり対応していく仕組みづくりや、日本語学習での失敗経験を持つ先輩学習者が、支援者側となりサポートするような環境づくりが、より良い支援につながると考えています。また、インプット(知識を身につけること)だけでなく、アウトプット(会話などで使ってみること)まで見据えた活動も必要だと思います。
会話を単なる「おしゃべり」と捉える人もいますが、それは違うと思います。日本語が母語でない私たちにとっては、ジェスチャー、表現、表情全てを勉強する良い機会なのです。
今後目指すことについて教えて下さい
来日前はボランティア活動に接する機会がなかったため、日本でボランティアの方たちと出会ったときは、「こんなに親切な人たちがいるなんて!」と衝撃を受けたものです。そしていつか、助けてもらった分を誰かに返そうと思うようになり、今の活動に結び付いています。今後もハーティ港南台での活動を通して、この善意のバトンをいろんな方につないでいきたいと思っています。
(掲載誌:情報冊子「にほんごコミュニケ―ション」2021年7月号)