日本語コミュニケーション ~つなげよう、広げよう~「やさしい日本語」を通してつながる(情報冊子 2021年6月号掲載)

 2001年より約20年間、YOKE発行の多言語生活情報誌「よこはまYokohama(やさしい日本語版)」の制作・編集を担当してきたグループみらいのみなさん。「やさしい日本語」をつかった情報発信の取組みと、その活動に込められた想いについて伺いました。

レポーター:木下 寛子さん、木野 美穂さん、中 和子さん

「やさしい日本語の芽が出て、膨らんで、花が咲いて…『ともに生きる』を合言葉にこれからも沢山の種を蒔き続けたいです。」

やさしい日本語 取組みのきっかけ

 1980年代に日本語ボランティアとして接する機会のあったインドシナ難民、中国残留邦人の方々は、日本語が分からないため日常生活での困りごとを多く抱えている状況でした。特に子育て関連(産婦人科や小児科の情報など)の相談が多く、非常に切迫していました。
 この時、「正確な情報さえ手に入れば自分で問題解決できる」ということを痛感し、これが私たちの「やさしい日本語で生活情報を提供する取組み」を進める原動力となっています。

情報誌「よこはまyokohama」 とともに歩んできた、やさしい日本語

 世の中でもやさしい日本語が広がり始めた2001年7月、YOKE発行の多言語生活情報誌「よこはまyokohama」のやさしい日本語版が誕生し、それ以来、分かりやすい日本語で横浜市の情報をお知らせしてきました。ただ、やさしい日本語の書き方のルールを私たちが最初から知っていたわけではありません。各地の先行事例も参考にはしましたが、主に、地域の日本語教室で、外国の方々と日本語で接した経験を頼りに取り組みました。
 元の文章の意図を活かしてやさしい日本語に書き換えるというのは、とても難しいことでした。難しいことばを易しく言い換えることはできますが、それを重ねていくと、文章は長く、回りくどくなり、何を言っているのか分からなくなります。回数を重ねていくごとに、伝えたいエッセンスだけを取り出して文章を組み替える方がやさしくなることが分かってきました。日本語学習者から学ぶことも多く、「単語の途中で行替えをすると、一つの単語として捉えられない」「ひらがなばかりが続くと、分かち書きをしていても意味が掴みにくい」などの意見をもらいました。
 また、行政からの発信は用心深く、細部まで誤解されないように詰めて書いてあります。言い切ることを避け、それが分かりにくさの元になっています。あっさりと言い切ることで分かりやすくなりますが、ニュアンスが変わることもあるため、時間をかけて表現のしかたを模索しました。

↓よこはまyokohama(2020年1月号)
市から提供される情報のほか、教育・医療・災害・イベント等のテーマで特集を組み、読んでもらえる(参加してもらえる)ためのヒントを探し続けました。「やさしい日本語版が他の言語への翻訳の際に役に立った」と言っていただいたことも!

やさしい日本語をとおして、つながる

 私たちが外国語ではなく「やさしい日本語」で情報提供を行うのには、理由があります。多言語翻訳の対象になりにくい言語を母語とする人も多くいるなど現実的な問題もありますが、何より、やさしい日本語には、それが生み出すであろう「つながり」の可能性があるからです。

「やってみよう」につながる

 日本語をいくつも読んでいくうちに、よく出る漢字やことばに慣れ、生活のためのサービス、地域のしくみやルールなどの知識を増やすことが可能になります。これにより、 その情報の活用方法を自分で決めることができ、「やってみよう」につながると考えます。

人と人とがつながる

 例えば、外国人がある手続きについて「もっと知りたい」と思ったとき、近所の人や役所の人にやさしい日本語で説明された紙を見せれば、その人は事情に則した説明が受けられるかもしれません。でも、それが外国語で書かれていたら、その人は日本人に尋ねてみようとすら思わない可能性があります。このように、やさしい日本語の情報が、外国人と地域の人がコミュニケーションをするきっかけとなり、 外国人が地域に溶け込むための架け橋になると考えます。

外国人に必要な情報を届けるために

 情報の伝わりやすさは、その情報が必要とする人に、「必要な時に」手渡されるかどうかで大きく左右されます。たくさんの情報を闇雲に発信するのではなく、届ける相手を思い浮かべての発信を心掛けると良いでしょう。私たちの活動が、みなさんの参考になれば嬉しく思います。

♪かながわ国際交流財団『やさしい日本語でコミュニケーション〜外国人にわかりやすく情報を伝えるには〜』の制作に、グループみらいが協力しました!

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