誰もが暮らしやすいまちづくりを目指して、地域の支援者や学習者と伴走をするYOKE日本語コーディネーターのお話(NL 2024年7月号掲載)
私たちの役割を考えながら、誰もが暮らしやすい地域づくりを目指していきたい。
板垣 美紀さん
地域日本語教育コーディネーター。2005年から地域の日本語教室など日本語教育に関わり、日本語学校講師も務める。
佐賀 直子さん
日本語学習コーディネーター。ブラジルの日本語学校での活動をきっかけに、在日外国人の支援を行う。
活動をする上で「より多くの方に参加してもらうこと」を大切にし、「日本語学習経験のある方とともに、誰もが活躍できる場所を増やしていきたい」と語る二人。それぞれの体験や、仕事を通じて考える理想の日本語学習支援などについて、対談形式で語ります。
よこはま日本語学習支援センター(以下、YNC)では、どのような事業を担当してきましたか?
板垣:「はじめての横浜~日本語で話そう」などの日本語教室、日本語での交流を楽しむ「おしゃべり交流会 ほっとタイム~NIHONGOではなそう!」、支援者向け研修「ブラッシュアップ講座」などを担当しました。
佐賀:日本語を勉強する人だけでなく、支援者向けの講座にも多数携わっていますよね。その他には地域との連携で、地域日本語教育推進モデル地域(緑区)も担当されていましたね。
板垣:はい。緑区の事業では区内の関係機関や団体と協力しながら、地域のニーズによりそったプログラムを検討・実施してきました。体験研修型日本語教室「ようこそにほんご@みどりく」では、日本語ボランティア入門講座受講者が日本語教室の活動を体験できる機会を設けました。また、外国人にとっても、日本語を学び交流できる場となりました。
佐賀:私は、主に生活者向けの3つの日本語教室を担当してきました。YOKE日本語教室や外国人親子向け、ウクライナ避難民向けの日本語教室です。どれも生活に密着した内容と、参加者の交流を大切にしています。
板垣:外国人親子向けの教室は、地域の子育て支援拠点や市内国際交流ラウンジと連携して講座を開催していましたね。
佐賀:はい、子育て支援施設を活用するなどして、ヨガや手遊びなど、親子で楽しめるプログラムを検討しました。支援者向けの講座では、コロナ禍で増加したオンラインでの日本語学習支援について学べる「オンライン日本語学習支援講座」も行いました。今後も地域の皆さんの「知りたい」に対応した講座を開催していきたいです。
そもそも、日本語コーディネーターってどんなことをするのですか?
板垣:地域の方々と連携しながら、日本語教室や支援者向け研修を検討・実施しています。企画段階から携わり、講師の選定、プログラムの検討、広報、実施、振り返り会の開催と、事業の開始から終了まで、一貫してサポートをしています。
佐賀:最後に行う振り返り会はもちろんですが、講座実施の途中で講師や運営メンバーと意見交換会を開くことも多いですよね。それぞれの課題を出し合いながら、常により良いプログラムになるよう工夫をしています。
板垣:講師の方と話し合いながらプログラムの内容を決めていきますが、日本語学習経験者(外国人)も参加することによりその幅が広がるように思います。「ひらがなはどうやって勉強したの?」「どういう勉強方法が1番良かったの?」など、具体的な学習方法を聞きながら進めることができるので、とても助かっています。
佐賀:新しい視点や価値観を発見し活動につなげていくためにも、多様な方々との関わりがとても大切ですね。
板垣:そうですね。日本語コーディネーターはいわば「縁の下の力持ち」のような存在で、地域や組織、人とをつなぎながら、地域日本語教育の広がりを目指しています。
佐賀:地域や組織、人との間に入って「つなぐ」という役割が大きいですよね。いつも地域のみなさんに支えてもらいながら活動しています。
活動の中で、力を入れていることは?
板垣:先ほどの話にもありましたが、「多様な方々に参加してもらいたい」という思いで活動をしています。今年度から外国人のサポーター(日本語教室などで、講師の補助や学習者のサポートを行う)が新たに3名も加わり、とても嬉しく思っています!
佐賀:3名も!すごいですね。みなさん来日時から日本語を話せたのですか?
板垣:母国で勉強をしていた方もいるようですが、まったく話せない状態で日本に来た方もいます。皆さん自分の学習経験を活かしたいと思っていて、準備の時からいろいろ質問をしたり意見を言ってくれたりします。
佐賀:前向きに取り組んでくれて嬉しいですね。日本語学習経験がある皆さんだからこそ、学習者によりそうシーンも多くなりそうです。学習者へのサポートをしたい外国の方も多いようなので、活動の場所が地域でももっと増えていくといいですね。
板垣:佐賀さんが担当するウクライナ避難民向け「にほんごクラス“ドゥルーズィ”みらいコース」では、大学生2人が日本語サポーターとして参加してくれていますね。若い世代の方々は、どんな感じですか?
佐賀:はじめてとは思えないほどスムーズに、しっかり温かく見守りながら楽しくサポートをしてくれています。年齢が近い学習者の方は、同世代の日本人とコミュニケーションがとれて嬉しそうです。その他にも、YOKEの日本語ボランティア入門講座を受けた6名の方も活躍しています。このようにいろんな方の協力がある中で日本語でのコミュニケーションが増え、学習者さんたちの「笑顔」も増えていくのがとても印象的でした。
板垣:日本語を使う機会が増えると、自信につながる方が多いようですね。
佐賀:自信を持つと、次は地域や職場での活躍につながるのではないでしょうか。そのお手伝いができるよう、今後も「日本語でのコミュニケーションを増やすこと」を大切にしながら、皆さんのサポートをしていきたいと思います。
外国人住民が地域で活躍するために、必要だと思うことは?
板垣:私たち支援者1人1人が、より多くの組織・人と知り合うことでしょうか。「つながり」が広がれば、外国人が必要とする多様な情報を把握することができますし、情報をピンポイントに届ける機会も増えると思います。
佐賀:まずは国際交流・多文化共生の拠点であるYOKEや国際交流ラウンジの存在を、より広く知ってもらう必要があるのかもしれませんね。そこから地域につなげることができます。
板垣:外国人コミュニティと直接つながることができると、もっといいですよね。また、支援金やアルバイトの有給休暇制度を知らない留学生もいるので、日本語学校と上手く連携しながら地域日本語教育の広がりを図るのもいいかもしれません。
佐賀:さまざまな分野の方との「つながり」を広げることで、外国人住民の生活のステップアップに「つなげる」機会も増えますよね。
板垣:そして、最終的には「地域社会での活躍」につながるまで、地域全体で見守ることができるといいですね。
日本語コーディネーターだからこそできることとは?
板垣:日本語教室や研修プログラムを企画・運営する際、日本語コーディネーターが入ることで事業を実施する背景や目的などが整理しやすくなり、明確なコンセプト設定が容易になります。その他、スケジュール管理や必要な準備などスムーズに進めていくためのサポートも行うので、地域の皆さんも新しいことにチャレンジしやすくなると思います。
佐賀:日本語学習支援に関するさまざまな相談にも対応できます。必要に応じて、適切な機関・団体につなげることもできます。外国人住民に対しては、YOKE内にある横浜市多文化共生総合相談センターと連携しているので、母語相談につなげることもできます。
板垣:日本語教室を立ち上げるノウハウもありますね。場所の選定から教室の運営方法や支援方法、日本語ボランティアの育成サポートなど多岐にわたります。
佐賀:まとめると、地域の皆さんの「知りたい」「やってみたい」「つながりたい」を実現することのサポートが、私たち日本語コーディネーターの大きな役割のひとつだと言えますね。
板垣:そうですね。今後も地域の皆さんと一緒に悩みながら、理想の横浜をつくっていけたらいいなと思います。
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