新しい生きがいを発見! ~海外での経験を活かし、地域で始めた日本語学習支援~(NL 2024年11月号掲載)

寄高 誠さん
中東など世界各国で仕事をしてきた経験を活かし、1年前から外国人への日本語支援をスタート。YOKEのウクライナの方向け日本語教室の他、地域日本語教室で日本語を教えている。

 横浜には地域の日本語教室が各地にあり、多くの市民が日本語学習支援や地域交流の場を支えています。「回数を重ねるごとに、支援をしたいという気持ちが大きくなる。一生続けていきたい。」― そう語るのは、リタイア後に日本語支援の活動を始めた寄高さん。はじめての経験に戸惑いながらも、日本で人生をスタートさせた外国人を温かくサポートしています。

地域における日本語支援の大切さを知る

 「人のために何か支援ができたら…」と考えていた時、とある新聞記事が目に留まりました。外国人の増加・多様化に伴う国や地域での日本語教育の課題の他、教室での地域交流の様子や住民らの思い、日本語支援の大切さを知ることができる内容でした。
 海外での経験を活かしたいと思っていた私は、地域の外国人と交流しながら日本語を教えるこの活動に強く興味を持ち、まずはインターネットで情報を収集し、YOKEの日本語ボランティア入門講座に参加しました。受講後はさらに「やってみよう」という気持ちが強くなり、近くの国際交流ラウンジ、地域の日本語教室に相談しスタートしました。

簡単にいかないからこそ楽しい

 学習者の皆さんは来日理由やとりまく環境がさまざまなので、抱える課題も多岐にわたります。生活や学習をサポートする中ではじめて知ることも多く、例えば、生活ルールや税金・年金などの制度を知らない、日本語が十分でないことで、仕事の継続や進学が難しくなるなどです。その支援には、情報収集など時間がかかることもありますが、簡単にいかないからこそ楽しいと感じます。そして何より、慣れない日本で一生懸命頑張っている皆さんを純粋に応援したいという気持ちが強くなりました。回数を重ねるごとに「もっとサポートしたい」という気持ちは膨らむばかりです。

いろいろな学習者さん

 日本人でさえ、暮らしていく中で大変に思うことがあると思います。そのような中、外国の方たちはどのような壁を乗り越えようとしているのでしょうか?少しだけ紹介します。

介護施設で働くAさん
入居者の方やスタッフと円滑にコミュニケーションがとれるよう、介護現場でつかう日本語を中心に勉強している。専門的な日本語は、外国人にとってかなり難しい。「日本語能力試験に合格する」という強い意志を持ちながら、仕事の合間をぬって頑張っている。

中学生のBさん
高校に進学したいとのことで、日本語および学習支援を行っている。学校で使う教科書は、当然ながら全部日本語。テストでは、独特な言い回しや表現、漢字などが分からず問題につまずくことも多いが、目標に向かって一生懸命頑張っている。

一生続けていきたい支援

 外国人の皆さんは強い意志を持って努力しているので、私も「もっと良い支援ができたら」と日々思いを巡らせています。毎日のように日本語を教えていますが、大変だと思うことはなく、皆さんに会うのが待ち遠しいくらいです。サポートを続けることで学習者の皆さんの人生が輝いていくのではと思うと、やりがいも出てきます。地域の笑顔を、日本の明るい将来をつくりだすこの「日本語支援」は、地域社会における重要な役割を担っており、一生続けていきたいと思っています。

支援の輪を広げるために…

 地域における日本語支援では、日本語学校などの教育機関とは違い、特別な資格は不要な場合がほとんどです。その人の生きてきた「経験」と、支援への「意欲」があればいいので、もっと広がる可能性があるのではと思っています。
 ただ、私の友人も日本語支援に興味を持ってはいますが、始めるきっかけが見つけられないでいるようです。そのような方のためにも、YOKEや国際交流ラウンジのような組織がもっと広く知られるようになり、より気軽に始められるような「きっかけ」がつくられるといいかもしれません。はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいりますが、その先には楽しく充実した世界が広がっています。皆さんも、ぜひ地域の小さな国際交流に参加してみてください!<終>

↑日本語を母語としない人とのコミュニケーションに興味がある人、すでに日本語での支援をしている人、日本語教室を運営している団体など、横浜の地域日本語教育に携わる方のための情報をQ&A形式で掲載しています。