経験を共有できる場の大切さ~とある外国人保護者の困りごと~(情報冊子 2020年11月号掲載)
コロナ禍における外国人保護者の体験を聞いて
YOKEでは不定期で、日本語学習支援者の実践コミュニティ「よこはま・地域日本語実践もちより会」を行っています。2020年10月に行った会では、外国人保護者からの困りごとが話題にのぼりましたので、その時の様子をお伝えします。
話 し 手:Aさん。ベトナム出身の保護者。 上の子どもが、この春小学校に入学しました。
困りごと:コロナ禍で学校行事がなく、学校の制度や 決まりがわかりません。
Aさんの困りごと ~新1年生の母としてのとまどい~
4月の入学式には、ピカピカのランドセルを背負って笑顔いっぱいの娘と、家族3人で出かけました。校門前で家族写真を撮ったものの、コロナ禍のため学校内に入れる保護者は1人だけで、夫は外で待ちました。集合写真もない簡素な入学式が終わり、入学式翌日から在宅学習となりました。
6月。学校への登校が始まりました。けれども、日本の学校を経験したことのない私には、学校のことがよくわかりません。懇談会など保護者向けの行事もできず、お便りと連絡帳のやりとりから学校のことを想像する毎日です。正直なところ、今でも不安が続いています。
7月の個人面談。やっと先生と話せました。私は、特に時間割の「がっかつ」について、教科書はあるのか、どういう授業なのか、聞きたいことがたくさんありました。でも、次の方が待っていて、知りたいことを全部は聞くことができませんでした。
Aさんが感じたこと ~外国人ママからのアドバイス~
この私の話に、日本で子育て経験のある、韓国や中国出身のみなさんから共感のことばやアドバイスをもらえました。「同じような経験をしたからよくわかります。」「勇気を出して学校に電話してみて。夕方の時間帯がいいですよ。」と聞いて、気持ちがとても楽になりました。
下の子は今年の春に幼稚園に入りましたが、上の子と同じ幼稚園ですので、比較的スムーズに溶け込むことができました。学校や園に通わせた経験があるか、学校の仕組みを知っているか、身近に質問したりできる人がいるかどうかなどで、親の気持ちの負担や苦労も、ずいぶん違うなと思いました。
Aさんの話を聞いて(YOKE)
日本語がとても上手なAさん。そのAさんでさえ、日本の学校の仕組みや文化の違いに大変な思いをしていることが分かりました。気軽に相談できる人がいればよかったのですが、1年生の保護者に知り合いがおらず、その上、ママ友などの知り合いを作る機会がコロナ禍で奪われてしまいました。また、学校に負担をかけたくないと、直接質問することに遠慮があったようです。
このような状況を、日本語支援者の集まりで聞かせてもらい、話し合うことができて良かったと思います。話し合うなかで気持ちが軽くなったり、前向きになれたり、視野が広がったりする、そんな場でありたいと改めて思いました。気軽に聞きあえる身近なつながりや、経験したことを共有する場を、今後も作っていけたらと思います。
YOKEでは、「まちのにほんご伴走隊」事業などを通して、希望する教室に対し個別のサポートをしています。ぜひご相談ください。