オンライン学習教材を、地域日本語教室で活用してみよう!(情報冊子 2021年1月号掲載)

コロナ禍でしばらく活動できなくなった地域日本語教室も、現在では市内70%の教室が再開しています(2020年9月1日現在)。新たにオンラインでの教室を開始した教室もありますが、これまでと異なる形態に、悩みを抱える支援者も多いようです。この記事では、今後活動を続けていく上でのヒントとなりうる情報を皆さまにご紹介いたします。

活用してみよう!多様なオンライン学習教材

 オンラインで学習支援を行うとき、どのような教材を準備したら良いのでしょうか。オンライン学習に適した教材を一から準備するのも良いですが、手間も時間もかかってしまいます。そこで、より手軽に始められる方法として、すでにインターネット上にある「オンライン学習教材」を利用することをお勧めします。
  例としては、文化庁運営の「『生活者としての外国人』のための、日本語学習サイト つながるひろがるにほんごでのくらし」があります。サイトに掲載されている動画や表現・言葉のリストなどは、日本語教室等で自由に使用することが可能とのことです。画面を学習者と共有しながら、楽しく授業を進めることができますね。
 この他にも、オンライン学習支援に適した教材がたくさんあります。くわしくは、つながるひろがるにほんごでのくらしWEBサイトのTOPページ下部「その他の教材・情報」よりご確認ください。

オンライン学習教材使用のメリット

 はじめてオンラインでの学習支援を行うとき、資料が配布できないことを不便に感じる支援者も多いようです。確かに、対面で行っていたように、紙の資料を配布しての学習支援は難しいと思います。
 しかし、使う資料は「紙」でなければならないでしょうか。日頃からスマートフォンを使いこなし、インターネットで何でも検索するような学習者には、むしろ「紙」でない方がいいのかもしれません。また、前述のように、インターネット上にはさまざまな学習サイトが存在します。そしてその多くに、右図のようなメリットがあります。
 支援者側も、これまでのように時間をかけて資料の準備をしなくても、既存のサイトを活用すれば、より手軽に活動ができるようになります。手法にとらわれることなく学習者とつながることを大切に、オンラインを活用した新しい可能性について考えてみませんか。


ネット上で公開されている教材の利点

・著作権の心配がない
・無料で入手できる
・共有しやすい
・何回でも見られる
・学習時間外でもいつでも見られる
 

*「日本語支援者向けオンライン講座」講師 社会福祉法人さぽうと21コーディネーター矢崎理恵氏資料より引用

日本語支援者向け「オンライン講座」を開催しました

 先に書いたような地域日本語教室の状況に合わせ、YOKEでは、2020年11月11日・18日の2日間にわたり、日本語支援者向けの講座「オンライン教材・会議システムを活用した日本語学習支援~つながり続けるための工夫~」を開催しました。
 第1回目では、オンライン学習支援の実践例として、実際にオンラインで教室を開催している団体のレッスン動画を紹介しました。学習者は自宅からの参加なので、普段見られない家庭での様子が伺えたり、部屋の中にある物を使って話を進めることができたりと、オンラインならではのメリットも話題にのぼりました。未経験の方も、すでにオンラインで活動されている方も、様々な実践例に触れ大変参考になったようです。
 第2回目では、オンライン会議システムZoomを利用した「活動」を体験しました。「コロナ禍にあるけれど、これからの自分、何をしたいですか。どうありたいですか」というテーマで、それぞれが漢字一文字を選び、それを共有しました。その後「なぜその漢字を選んだのか。」ということをブレイクアウトルーム(Zoomのグループ分け機能)に分かれて話し合うなど、実際の教室活動を体験しました。
 オンラインでは、学習サイトを見るだけではなく、1つのフォームを共有して全員で書き込むことも可能です。これまでのように何度もメールでやりとりすることなく、その場で参加者から意見を集めることができます。さらに、Googleドキュメント等を使用すれば、それぞれの情報を共有することができるので、簡単に成果物を持ち帰ることが可能になります。

学習支援者向け「オンライン講座」の開催

 支援者向け講座に引き続き、日本語学習サイトを使った日本語学習者向けの講座を12月2日・9日に開催しました。すでにオンラインで学習支援を始めている方数名にも、学習者の会話練習のサポーターとしてご参加いただきました。残念ながら、学習者の突然のキャンセルや欠席もありましたが、その一方で、講座中に学習者から「今から友達をよんでもいいですか。」という話が出て急遽友人が参加する、という嬉しいハプニングもありました。
 講座では、「つながるひろがるにほんごでのくらし」のレベル2「お店のサービスを利用してみよう」を使用し、会話練習を進めました。まずは全員でコンビニでの会話動画を視聴し、声に出して同じように話す練習をしました。その後、学習者とサポーターがブレイクアウトルームに分かれて個別で会話練習をするなどの時間もありました。Zoomの機能を上手に使うことで、ほかの学習者の発話時間を待つことなく、それぞれが自分の練習に集中できました。
 新しい学習の「カタチ」に触れることができた今回の講座。学習者はたくさん発話する機会があり、また、場面の一連の会話を学ぶことができて、達成感もあったようです。また、サポーターの皆さんも、初めて会う人との会話や、オンラインで動画を再生するという初めての操作にドキドキしながらも、学習者と一緒に楽しんでいました。
 支援者向け、学習者向け両方の講座を担当してくださった矢崎理恵様、本当にありがとうございました。

今後の教室活動

YOKEスタッフ

 この先、コロナの状況が落ち着いて通常の活動が戻ってきても、オンラインの形態は残っていくと考えられます。また、対面教室でも、インターネットの学習サイトを見ながら進めていくこともできるでしょう。支援の形も時代と共に変化していくものです。
 これからの新しい学習スタイルの1つとして、オンラインでの学習支援に取り組んでみてはいかがでしょうか。これからも地域の日本語教室などのみなさまと情報を共有しながら、つながりつづけるための教室活動を考えていきたいと思っています。

YOKEでは、横浜市内で活動する地域日本語教室や日本語学習支援に関わる団体に対し、個別のサポートをしています。ぜひご相談ください。

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